はじめに
屋外でケーブルラックを使うことになり、選び方を整理しました。公共電気工事の有識者に確認しながらまとめています。
大枠はわかるけどソースが曖昧だったりしているので、自分のための備忘録として書きます。
1. 決める順番
- 材質を選ぶ(使う場所で決まる)
- 幅を決める(ケーブルの本数と太さ)
- 支持間隔を決める
- 接地と耐震に注意
2. 材質は使う場所で決まる
公共建築設備工事標準図では、記号ごとに仕上げが決められています。
| 記号 | 仕上げ | 形状 |
|---|---|---|
| ZM | 亜鉛の両面付着量100g/m²以上の溶融亜鉛めっき鋼板に塗装 | はしご形 |
| Z35 | JIS H 8641のHDZ35以上の溶融亜鉛めっき | はしご形 |
| ZA | 溶融亜鉛-アルミニウム系合金めっき鋼板。HDZ35と同等の耐食性 | はしご形 |
| AL | アルミニウム合金に陽極酸化皮膜 | はしご形 |
| ZT | ZMと同じ仕上げ | トレー形 |
記号の末尾にWPが付くと、同じ仕上げのカバーが付きます。
出典:公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)令和4年版 P153
どこに何を使うか
農林水産省の技術指針に、使用場所ごとの選定表があります。
| 記号 | 一般屋内 | 一般屋外・湿気の多い屋内 |
|---|---|---|
| ZM | ○ | — |
| ZT | ○ | — |
| Z35 | — | ○ |
| AL | — | ○ |
ここで言う「一般屋外」は、海岸地帯や腐食性ガスの出る屋外を含みません。塩害地域はこの表の外なので、別に検討が要ります。
使用場所の条件.png)
出典:農林水産省 電気設備計画設計技術指針(高低圧編)表4.4-40
3. 幅の決め方
何段まで積めるか
先に段数の上限があります。
| ケーブルの種類 | 積段数 |
|---|---|
| 高圧・低圧幹線ケーブル | 1段積み |
| 低圧ケーブル | 2段積み以下 |
| 制御・計装ケーブル | 3段積み以下 |
高圧ケーブル用のラックに他のケーブルを一緒に載せる場合は、金属製の隔壁(セパレータ)が要ります(電技解釈第202条)。
算定式
電力ケーブルの場合(高圧1段積、低圧2段積以下)は次の式です。こちらも HARITAさんのHPがとってもわかりやすかったです。
W ≧ 1.2{Σ(D+10) + 60} [mm]
D:ケーブルの仕上り外径
出た値が収まる直近上位の標準寸法を選びます。
このほか、ケーブル条数、ケーブル重量、将来の増設スペースも選定条件に挙がっています。
寸法の条件.png)
出典:農林水産省 電気設備計画設計技術指針(高低圧編)表4.4-50
4. 支持間隔
公共建築工事標準仕様書に数値が決まっています。
| 区分 | 支持間隔 |
|---|---|
| 水平(鋼製) | 2m以下 |
| 水平(その他) | 1.5m以下 |
| 垂直 | 3m以下(配線室等は6m以下で各階支持) |
直線部とそれ以外の接続部では、接続部に近い箇所とラック端部に近い箇所で支持します。
つりボルトの径も決まっています。
| ラック幅 | つりボルト |
|---|---|
| 呼び600mm以下 | 呼び径9mm以上 |
| 呼び600mm超 | 呼び径12mm以上 |
そのほか、終端部にはエンドカバーか端末保護キャップを設ける、アルミ製は支持物との間で異種金属接触腐食を起こさないように取付ける、といった規定があります。
令和4年版」P75.png)
出典:公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和4年版 2.10.1
なお、この2m以下は仕様書の値です。積載重量が大きい場合は、メーカーの許容静荷重表で成立するか別に確認します。
5. 接地
種別は使用電圧で決まる
| 使用電圧 | 接地工事 |
|---|---|
| 300V以下 | D種 |
| 300V超 | C種 |
出典:内線規程 3165-8
2Ω以下という目安
内線規程JEAC8001-2022 3110-7に「接地線から金属管の最終端に至る間の電気抵抗は、2Ω以下に保つことが望ましい」とあり、ケーブルラックも同等と考えます。
塗装品はラック相互の接続部に塗膜が挟まるため、ボンド線なしだと接続抵抗がばらつきます。ノンボンド工法(BLC方式)を使うと確実に接続できます。
メーカーの計算例では、2Ωに達するまでの長さはこうなります。
| タイプ | 距離 |
|---|---|
| SRタイプ(SRG1) | 1,452m |
| QRタイプ(QRG1) | 2,196m |
| SRタイプ(SRG3) | 1,476m |
| QRタイプ(QRG3) | 2,181m |
1,400m以上なので、ふつうは超えません。長距離の屋外敷設で気になったときに確認する程度です。
超えそうなときは、ラックに沿わせたアース母線から分岐して落とします。
なお、水平自在継ぎ、伸縮自在継ぎ、口径違い、特殊分岐継ぎ金具にはボンド線が要ります。現場でドリル穴あけをした場合も同様です。

出典:ネグロス電工 技術資料(接地工事)
ボンディングの省略
標準仕様書には「ケーブルラックの自在継手部及びエキスパンション部には、ボンディングを施し、電気的に接続する。ただし、自在継手部において、電気的に接続されている場合には、ラック相互の接続部のボンディングは、省略することができる」とあります。
ノンボンドタイプの継ぎ金具は、この「電気的に接続されている場合」に該当するとして省略できます。
6. 耐震
支持間隔
建築設備耐震設計・施工指針で、耐震クラスと設置場所ごとに決まっています。
耐震クラスA・B対応
| 設置場所 | 耐震支持 |
|---|---|
| 上層階・屋上・塔屋 | 8m以内に1箇所 A種またはB種 |
| 中間階・地階・1階 | 12m以内に1箇所 A種またはB種 |
耐震クラスS対応
| 設置場所 | 耐震支持 |
|---|---|
| 上層階・屋上・塔屋 | 約6m以内に1箇所 SA種 |
| 中間階・地階・1階 | 約8m以内に1箇所 A種 |
耐震クラスは建物の用途と機器の重要度で決まります。判定についてはHARITAの設計室の記事が分かりやすいです。
適用除外になる条件
次のどれかに当てはまると、上の適用から外れます。
- 支持間隔について別途間隔を定めることができる場合
- 幅400mm未満のもの
- 吊り長さが平均20cm以下のもの
鉄骨に密着させて支持すると吊り長さは0なので、除外に入ります。支持方法を決めた時点で判定できるので、金具を選ぶときに一緒に見ておくと手戻りがありません。
ただし注記があります。
- 吊り長さが平均20cmでも、長さが異なる場合は短い部分に地震力が集中するため、適宜、耐震支持が要る
- 末端付近では、耐震クラスによらず耐震支持を設けるのが原則
- メーカーが確認した製品なら、最大12mまで支持間隔を広げられる
出典:建築設備耐震設計・施工指針 2014年版
施工上の注意
耐震支持は、自重支持とは金具が違います。
- 耐震支持部にはラックに穴をあけてボルトで締結する。自重支持で使う振れ止め金具は使わない
- 立上りの耐震支持では補強継ぎ金具を使う
- 吊り金具には補強金具を併用する
- ダクターチャンネルは穴をあけて吊りボルトを貫通させる。中ナットは使わない
出典:ネグロス電工 技術資料(耐震システム)
7. 高圧・低圧・弱電を同じラックに載せるとき
どの組み合わせかで規定が変わります。
| 組み合わせ | 規定 |
|---|---|
| 低圧と弱電 | 接触しないように。数値規定なし |
| 高圧と低圧 | 0.15m以上、または管・トラフ・隔壁 |
| 高圧と弱電 | 同上 |
| 高圧と高圧 | 適用外 |
低圧と弱電は「接触しないように」
電技解釈第167条第2項に、こうあります。
ケーブル工事により施設する低圧配線が、弱電流電線又は水管等と接近し又は交差する場合は、低圧配線が弱電流電線又は水管等と接触しないように施設すること。
出典:電気設備の技術基準の解釈 第167条
公共建築工事標準仕様書2.1.5も同じで、ケーブル配線の場合は弱電流電線や光ファイバケーブル、水管、ガス管等と接触しないように施設する、とされています。
条件は「接触しないこと」だけで、何cm離せという数値はありません。
数値があるのはがいし引き工事だけです。第167条第1項に10cm(裸電線は30cm)とあります。ケーブルラックはケーブル工事なので適用外です。
ラックと弱電線の離隔距離を探しても見つからないのは、そもそも数値規定がないためです。
高圧が相手なら0.15m
高圧配線が、他の高圧配線・低圧配線・弱電流電線等と接近または交差する場合は、次のどれかによります。
| 方法 |
|---|
| 0.15m以上離す |
| 高圧ケーブルを、火に強く丈夫な管またはトラフに収める |
| 高圧ケーブルと相手の間に、火に強く丈夫な隔壁を設ける |
高圧ケーブル同士の場合は適用外です。
出典:公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 2.1.5、2.1.6
8. ラック上の並べ方
高圧 → セパレータ → 低圧 → セパレータ → 弱電
セパレータで仕切って系統ごとにまとめます。ただし見えない部分では高圧以外は入り乱れている、という話も聞きました。
9. 鉄骨との離隔
規定はありません。必要なのはケーブルが鉄骨に触れて傷つかないようにすることです。蓋と接触しそうな箇所にスパイラルチューブを巻く程度の対応になります。
機器底面からラック開口部までも、閉所で人が立ち入らない場所なら保護は不要です。
屋外では紫外線と風雨の影響があるので、耐候性のあるケーブルを選ぶかPF管に入れます。架空で使う電線のように耐候性があればそのままで問題ありません。
おわりに
支持間隔は標準仕様書、耐震は耐震指針、接地は内線規程と、根拠がばらけています。
他の事柄についてもいえることだと思いますが、いろんな規程とか法規とかが多すぎますよね、、。ちょっと時間を見つけて整理したいと思います。

コメント