2×1×0×_成城にてうちあわせ_3

記憶の書
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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

組織はよく閉じた回路を持っている。

内部通報の図を描いてみるとわかりやすい。四角い箱と矢印が並び、通報者は左端のいちばん小さい枠に置かれる。電話、書面、ファクス、面会。どの手段を選んでも、矢印はひとつの場所に集まる。通報を受け付ける窓口だ。

2

図の上では、そこから内部監査室に報告が上がる。常務理事と法人事務局長が協議し、調査委員会が置かれ、事実調査が行われる。結果は理事長に報告され、不正がなければ通報者に調査結果が通知される。不正があれば是正措置と再発防止措置が通知され、関与した者に処分が下る

よくできている。線は一本も途切れていない。

3

ただ、この図には前提がある。すべての矢印が、はじめのひとつの箱を通るということだ。

その箱を預かる人が、通報される側と近ければ、あとの箱がどれだけ整っていても関係がない。蛇口を握っている人が、水を流したがるとは限らない。線は描かれているが、そこを何が通ったかは外から見えない。

そうだった。手続きは全部あった。あって、動かなかった。そこで行き止まりになった。

4

Sさんは、その回路の外側で、日付とやりとりを重ねていた。

図の外に残された記録だけが、図が動いたかどうかを後から確かめられる材料になる。

Nは図を眺めて、どの箱に決める力があるのか、とだけ聞いた。

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この記事を書いた人

白晝堂々(はくちゅうどうどう)

作編曲家/電気主任技術者

YNU→半導体メーカー→再エネ事業→限界フリーランス

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