これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。
1
朝、居室のある総合管理棟の二階で、ロッカーが一緒になる人がいた。その時間の会話が楽しみだった。
管財課の人で、ヒミズと呼ばれていた。誰が言い出したのかは知らない。
2
その日は新聞に契約容量の話が出ていた。これだけの建物があったら特高受電になるのか、とSが独り言のように言った。
高圧三系統で引き込んでいる、とヒミズさんが言った。公道も挟んでるからね。地絡の継電器もつけてはいる。新校舎との取り合いのところが結構大変でね。
ロッカーの扉を閉めながら、順番に、静かに話す人だった。
3
ここは早く出て行った方がいい。
同じ朝に、そうも言われた。建築と電気と設備、どれが欠けても建物は成り立たないだろう。建物も自由も、潔癖でないと駄目なんだよ。
ヒミズさんは、Sさんが辞めた直後に定年を迎えているはずだ。
4
窓の外では旧校舎が壊されていた。ユンボの音に混じって、長い髪の管財課の人間の笑い声が響いていた。
