2×1×0×_成城にてうちあわせ_28

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

名刺も、ここで頼めるよ、と人事課の同期は言った。初めての人は、二週間くらいかかるらしい。

2

二週間して、机に名刺の箱が届いていた。何枚か、上着の内ポケットに移した。

3

打ち合わせは、彼が僕の予定に入れていた。駅の、ホームへ下りる階段の手前の柱に巻く広告と、記念の乗車券の話だ。

年上の人と、若い人と、刷り出しを持った人が来た。総合管理棟の二階、左手の応接室に通した。

若い人が、よく通る声で、箱根の紅葉がちょうど見頃だそうです、と言った。五分たっても、彼は来ない。

4

年上の人が立ち上がって、名刺を両手で差し出した。頭を下げたまま、待っている。名前は、年上の人の親指に半分隠れていた。見えたのは、田、の一字だけだ。

内ポケットから一枚出したとき、扉が開いた。彼は三人に頭を下げて、ハンカチで額を長く拭いた。それから、僕の手元を見た。

僕は名刺を渡して、若い人とも交換した。

5

打ち合わせのあいだ、彼は僕を一度だけ、君、と呼んだ。終わって、もらった二枚の名刺を、彼の机の上に置いた。

ナカノなら、名刺二枚で大騒ぎするな、と言うだろう。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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