記憶の書– category –
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記憶の書
2×1×0×_成城にてうちあわせ_21
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 回るテーブルの店だ、と彼は言った。二階のテーブルは回らなかった。正門を出てすぐの、花屋の奥に入口があった。花のバケツのあいだを抜けて、狭い階段を上がった。二階には誰もいなかった。... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_20
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 学園祭の日、Sと僕は写真を頼まれていた。海外から来た若いピアニストが、講堂で一曲だけ弾くことになっていた。部署に一台しかないカメラは、棚になかった。貸出の帳面には、朝の時刻と、よ... -
記憶の書
2×1×0×_成城にてうちあわせ_19
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 節目の年の準備は、どの部署にも少しずつ降ってきた。同じ年に、新しい校舎の工事も重なっていた。僕は大きな設計事務所の人たちと、屋上に載せる太陽光のパネルの枚数を、図面の上で数えてい... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_18
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 研修は、居室の反対側にある応接室で受けた。ソファーは低く、深く、座ると膝のほうが高くなった。同期は部署も年もばらばらで、配られた資料の束の厚さだけが揃っていた。 2 研修の初日が終... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_17
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 キエさんの店には、伝票がない。 何を何杯飲んだかは、キエさんが覚えている。帰りぎわに一度だけ言われる数字は、僕の覚えている数とたいてい合う。合わないときは、キエさんのほうが正しい... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_16
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 次は僕の番だった。 Sは日付から話す。手帳を開かなくても、日付のほうが先に出てくる。僕には日付がない。残っているのは、形だけだ。 2 十月に入って、三月に出た。 机は柱の陰にあった。午... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_15
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 十一年前、Sの友達が死んだ。ベースを弾いていた人で、仕事は溶接工だった。 家は尼崎にあった。Sは電車に乗って、途中でバスに乗り換えて、そこまで行った。乗り継ぎのある道は、帰りに一人... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_14
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 Sと歩いたことが一度だけある。駅から駅まで。私鉄で一駅の区間を、歩いた。 2 学園のある側は、道が広い。生垣が続いている。住んでいる人たちの申し合わせで決まったものだと、あとで知った... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_13
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 曲が終わっても、キエさんは次をかけなかった。 真空管は灯ったままだった。スピーカーの奥で、耳を寄せなければわからないほどの低い音が続いていた。五十ヘルツ。周期は二十ミリ秒。音楽が... -
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2×1×0×_成城にてうちあわせ_12
これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。 1 Sは、八尾の、できたばかりの大学の一期生だったという。 家は町工場で、太陽光のパネルを屋根に留める金具を作っていた。曲げて、穴を開けて、めっきに出す。夏は、鉄板を曲げる機械の熱と屋...