2×1×0×_成城にてうちあわせ_23

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

鍵の束には、どれも札が付いている。ヒミズさんは一本ずつ、札の字を読ませた。

一本だけ、札のない鍵がある。それはいい、とヒミズさんは言った。

2

台車に古い機器を載せて、旧校舎へ運んだ。空調の機械室の前を通るとき、ヒミズさんが言った。

空調機の扉だけは静かに閉めろ。あっという間に、吹き出し口に音がいく。

台帳と現物を突き合わせていくと、図面にない扉が一つあった。

3

ヒミズさんは札のない鍵で扉を開けて、中に入った。扉は半分だけ開いたままになった。

部屋の真ん中に、段差が一つある。壁に大理石の配電盤があって、刃の形をした開閉器が並んでいる。継電器の小さな窓の一つだけ、札が落ちたままになっていた。

段差に、図書館のナギスケが座っていた。

4

ヒミズは落ちた札を見て、戻さない。

ナギスケが黒い眼鏡を少し押し上げて、もういい? と聞いた。ああ、もういい、とヒミズは言った。

扉は静かに閉められた。

隣の空調機の扉を、ヒミズは閉めた。

ガタン。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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