2×1×0×_成城にてうちあわせ_22

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

節目の年の年表は、まだ埋まらないところがある。Sに頼まれて、地下の倉庫から段ボールを二つ、台車で上げた。

箱の側面には、鉛筆で名前が書いてあった。消しゴムで消した跡だけが残っている。

2

中の紙は、どれも角が揃っている。付箋には鉛筆の字で、要、不要、とだけ書いてある。

挨拶文の下書きが何枚もあった。赤い線は、鉛筆の字を何本も横切っている。

3

刷り上がった冊子が一部、下書きの下にあった。最後のページに、関わった人の名前が並んでいる。

下書きの同じページには、鉛筆でもう一行ある。冊子のほうには、その行がなかった。

鉛筆の字は、どれも消しゴムで消せるくらいの薄さだった。

4

引き継ぎの表は、三枚にわたっている。項目と日付と置き場所が、同じ幅で並んでいる。

最後の行だけ、項目の欄に、仕事ではないものが書いてあった。

冷たい鼻。ゴム手袋。三番線。網戸。猫ヲ読ム。

置き場所の欄は空いていた。

5

束のあいだに、印刷したメールが一枚はさまっていた。差出人の欄は、端が折れて読めない。

……君のために。
……にはいらない。
……いらない。

もう一度、上から読んだ。紙を元の束に戻して、角を揃えた。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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