2×1×0×_成城にてうちあわせ_15

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

十一年前、Sの友達が死んだ。ベースを弾いていた人で、仕事は溶接工だった。

家は尼崎にあった。Sは電車に乗って、途中でバスに乗り換えて、そこまで行った。乗り継ぎのある道は、帰りに一人で逆にたどることになる。

2

知り合ったのは、酒屋でやっていたセッションだった。彼はそこでベースを弾いていた。十二歳上で、干支が同じだった。それで、えとバンドを組んだ。

眠れないときは、ペニスを頭の上にのせるところを想像するといい。そうすると眠れる。Sにそう教えたのは、彼だった。

3

セッションで何度も会っていた。弾いているときは、左手が動いて、右手が動いて、本人が揺れていた。見ていたのは、その動きのほうだった。

4

部屋には、バンドのTシャツがたくさんあった。どれもきれいに畳まれて、並べてあった。お母様に声をかけて、何枚かもらった。メイキング・ザ・ロード。ドゥーキー。ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス。

ジョニオも、ジョニーも好きだったらしい。それも、そこで初めて知った。

ベースもあった。ヘッドに、M#245と書いてあった。アトリエZが最初に出したモデルだった。初めのころのものは、ブリッジがバダスだった。いまは自社のものに替わっている。何度も見ていたのに、Sはそれを、そこで初めて読んだ。

動かなくなると、細かいところが見えてくる。

残されたものは、続けなければいけない、とSは言った。

5

ある作家は、葬式に行かないと書いていた。黒枠の写真を見てしまうと、本当に別れたことになる。見なければ、いつかどこかの街で、ばったり会うような気でいられる。

その作家は、飲食店の階段から落ちて、そのまま戻らなかった。

6

Sも、遺影を見るまでは、そんな気でいたという。

僕は、相づちを打たなかった。

遺影の彼は、金髪だった。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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