2×1×0×_成城にてうちあわせ_10

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

ローゼは、商店街の一番奥、二階にある。

音楽の仕事を辞めたあとに作った店らしい。五席しかない。キエさんが一人でやっていて、常連が二人入ればもう埋まる。埋まっても狭く感じないのは、みんな声を張らないからだと思う。常連はキエさんと呼ぶ。由来は誰も知らない。

2

棚には瓶が並んでいる。シングルモルトだけで数え切れない。数えたことはないそうだ。奥にはCDが詰まっていて、その手前に真空管のアンプが置いてある。瓶の列の上には、ポットが五つ六つ並び、画集が立てかけてある。猫の置物が一つ、こちらを向いている。

壁にはギターがかかっている。どうやら壊れているらしい。今度、安いのでいいから買ってきてよ、と前から言われている。まだ買っていない。

3

いまはコルトレーンの Say It (Over and Over Again) が流れている。1962年のバラード集の一曲目だ。こちらの話とは関係がない。関係がないが、何度でも言ってくれ、という題の曲が鳴っている部屋で、僕らは同じ話を何度もしている。

4

初めて来た人にも、常連が先に声をかける。そういう店だ。公共性を帯びた顔の人が座っていた。誰も振り向かなかった。

だから僕らは、あの話をするのにこの店を選んだのだと思う。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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