これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。
1
節目の年の準備は、どの部署にも少しずつ降ってきた。
同じ年に、新しい校舎の工事も重なっていた。僕は大きな設計事務所の人たちと、屋上に載せる太陽光のパネルの枚数を、図面の上で数えていた。古い校舎の図面は、ところどころ実物と合わなかった。
節目の仕事として管財に来たのは、倉庫の鍵と、古い段ボールを出すことだった。鍵の束は、ズボンのポケットに入れると片側だけが重くなった。
2
倉庫は地下にあって、階段を降りきると空気が一段冷たくなる。
年表の係に頼まれて、年ごとの記録の箱を探した。箱の側面には、太いペンで年が書いてある。湿った段ボールは、持ち上げると底から先に沈んだ。
床に順に並べていった。棚のその段だけ、埃が四角く薄かった。
係の人は空いた床を見て、あとで探しましょう、と言った。
3
卒業生の話を聞きに行く仕事は、別の部署がしていた。名の知れた人たちだったらしい。
僕に見えたのは、紙袋を提げて出ていく背中だけだった。紙袋の中身は謝礼の品で、のしの表書きはどれも同じだった。
4
節目に向けて集めているメッセージのカードは、しばらく倉庫に置かれた。
箱の蓋の裏に、係の人が鉛筆で正の字を書いていた。
僕は箱を棚の上の段に上げ、電気を消して階段を上がった。
5
年表の下書きの束が、箱の底から出てきた。
一桁の月には、どれもきちんとゼロが付いていた。書いた人の名前は、どこにもなかった。

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