2×1×0×_成城にてうちあわせ_16

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これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。

1

次は僕の番だった。

Sは日付から話す。手帳を開かなくても、日付のほうが先に出てくる。僕には日付がない。残っているのは、形だけだ。

2

十月に入って、三月に出た。

机は柱の陰にあった。午後になっても、画面に日が当たらなかった。壁の時計は、駅の時計より少しだけ進んでいた。

3

覚えているのは、線のほうだ。机の端、窓枠、書類の罫線。罫線の中に何が書いてあったかは、出てこない。

それで足りる、とNが言った。

4

階段のほうから、声がした。

窓口の人たちは、電池が切れるのを待つしかない。

誰の声だったのかは、わからない。振り返らなかった。言葉だけが、耳に残った。

5

猫の置物が、こちらを向いていた。額のところで、黒と白がちょうど半分に分かれている。

キエさんがレコードを裏返した。針が落ちるまでの、短い間があった。

最初の朝にも、同じ長さの間があった気がする。

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この記事を書いた人

作編曲家/電気主任技術者

YNU ☉⁠➛ 太陽光 †⁠➛ 学校 ⏚⁠➛ 半導体 ∴⁠➛ 独立

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