これも記憶で書く。だから細部は、記憶のかたちをしている。
1
回るテーブルの店だ、と彼は言った。二階のテーブルは回らなかった。
正門を出てすぐの、花屋の奥に入口があった。花のバケツのあいだを抜けて、狭い階段を上がった。二階には誰もいなかった。テーブルクロスは白く、どこも整っていた。奥の厨房から、油と、雨のあとの路地のようなにおいがした。Sが一度だけ、そちらを見た。
彼は窓側に座り、テーブルの端にカメラを置いた。部署に一台しかないカメラだった。ストラップが、きちんと巻いてあった。
2
ビールを三つ頼んでから、メニューを閉じた。
これからの学校はガバナンスだよ、と言った。
Sは、取り皿を三枚並べた。
ガバナンス。君、ガバナンス。彼は手のひらで、頭のてっぺんを撫でつけた。
餃子が来た。
3
話は途中から、街をつくるゲームの話らしかった。道路を引き、条例を出し、人を住まわせる。
女は全員はらませてやった。
Sは、醤油の小皿を僕のほうへ寄せた。
彼は、Sが寄せた小皿を、元の場所へ戻した。
僕は、酢を少し足した。
君、ラー油、と言われた。
花屋の前で、彼はつばのある帽子をかぶった。

コメント